ヒルティ【人間こころ図鑑】
【普通の人間の駆動因】
普通の人間は自然に自分の利益を求めるもので、彼らの思考も行動も、主として、‘損害に対する恐怖’か‘享楽に対する愛好’かによって決定される。
『幸福論 第一部』(岩波文庫)p.70
【嫉妬】
才能と意志の欠けているところに、いちばん嫉妬が生ずる。
【虚栄心】
人間のすべての性質の中で、‘嫉妬’は一番みにくいものであり、‘虚栄心’は一番危険なものである。 『眠られぬ夜のために 第二部』1月25日
人との交わりにおいて、もっとも有害なものは、‘虚栄心’である。
『眠られぬ夜のために 第一部』5月15日
虚栄心は常に見透かされる。虚栄心ばかりは誰の気にもいらない。したがって、 悪徳の中でも一番ばかばかしいものである。
『眠られぬ夜のために 第一部』5月15日
【笑い】
人は何を笑いの対象にするかで その人の人格がわかる。
声高い非難や嘲笑には、自分の内心の動揺をひそかにごまかそうとする意図よりほかに何ものもない場合がしばしばある。
『幸福論 第一部』(岩波文庫)p.63
【愚痴】
「この世とその営み」についての不平や愚痴は、およそこの世で最も無益なものである。
『眠られぬ夜のために 第一部』12月29日
人から同情してもらいたがるのは、一つの弱点であり、最もすぐれた人には決してあり得ないことである。
『眠られぬ夜のために 第一部』7月19日
【不安】
人を不安にするものは、事柄そのものではなく、むしろそれに関する人の考えである。
起こるかもしれない不幸に対する心配は、ぜひとも忍ばねばならない現実の不幸よりも、いっそうひどく人の力を消耗させる。
『眠られぬ夜のために 第一部』3月15日
心配に対する最上の対策は、忍耐と勇気である。
【恐怖】
恐怖は常に人間の中に何か正しくないことが生じた徴候である。 恐怖は、苦痛が肉体に対して果たすのと同様に、精神に対しても貴重な警告者の役目を果たす。
【勇気】
幸福を得るには、あらゆに人間の性質の中で、勇気が最も必要である。
【怒り】
何かにつけて怒ることがある限り、まだ自分を支配しているのではない。
『眠られぬ夜のために 第一部』9月21日
【憎悪】
われわれが人生において、人の憎しみを受けるとき、その大部分は、相手の嫉妬か報いられなかった愛のためである。
『眠られぬ夜のために 第一部』3月21日
侮辱された瞬間に、憎しみの念を魂に‘入り込ませ’てはならない。
『幸福論 第一部』(岩波文庫)p.62
人から受けた不正をいつまでも思い続けることはつねに有害であり、その上、たいていは無益である。
『眠られぬ夜のために 第一部』2月16日
【傷心】
傷つけられた感情も、時が立つにつれて、また神の恵みによって、しだいに宥(なだ)められるものである。
『眠られぬ夜のために 第一部』1月7日
【忘恩】
忘恩は耐えがたいものである。しかし、誰にも忘恩を非難してはならない。
『眠られぬ夜のために 第一部』9月20日
【同情】
同情心が欠けているということは、女性の場合、致命的な性格上の特徴となる。
『眠られぬ夜のために 第一部』1月30日
【喜び】
喜びが何であるかは、元来、多くの苦しみを耐え忍んできた人のみが知っているのだ。 それ以外の人たちは、真の喜びとは似ても似つかぬ単なる快楽を知っているにすぎない。 むしろそのような人々は、真の喜びに耐えることすらできないであろう。
【高慢】
高慢は、つねにかなりの愚かさに結びついている。高慢はつねに破滅の一歩手前で現れる。高慢になる人は、すでに勝負に負けているのである。
【謙遜】
過度に謙遜な人を真に受けてはいけない。 ことに、自分で自分を皮肉るような態度を信用してはいけない。 その背後には、たいがい虚栄心と名誉心の強烈な一服がひそんでいる。
悩みのみが正しい意味で、人を謙遜にする。
「わが魂の苦しみによって、世にあるあいだ、つつしんで歩きます。」(イザヤ書38:15)
謙遜は、人間の心のあらゆる性質のなかで、おそらく一番、生得の性質から遠いものであろう。
『眠られぬ夜のために 第一部』9月6日
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